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キュレーションサイト問題の本質はどこに...?【コラム】
2017年04月24日
キュレーションサイトが揺れている。事の発端は、IT業界での大手企業(以後:A社)が手掛ける医療サイトにて、著作権法違反などの違法行為が次々に明るみになったことだ。他企業のキュレーションサイトでも同様の事案が発覚し、ネットメディアの信頼が改めて問われる格好となった。企業法務にも多大な影響を与える問題だけに問題の背景を少し考えてみたい。
ネットメディアのずさんさが浮き彫りに
A社が運営する医療情報サイトにて記事や画像の違法盗用が明るみに出た。同サイトは運営停止となり、A社の経営陣にも責任の声が上がっている。この問題は、公開されている医療情報サイトのコンテンツに著作権侵害が多数含まれ、他にも薬の効能に関する医薬品医療機器等法違反や、医療機関の広告に触れる医療法違反の疑いももたれている。さまざまな違法行為が次から次に発覚し、掲載された記事の信ぴょう性が根底から揺らいだ。これは掲載されたごく一部の記事だけでなく、最大で2万件を超える記事で著作権が侵害されている可能性があるという。さらに70万件を超える画像にも複製権侵害の疑いがかけられている。大量のコンテンツに違法行為が含まれていただけに事態は深刻さを増している。
違法行為を生みだす背景
問題となった医療情報サイトの執筆者は医師でもなく薬剤師でもない。フリーランスのライター、主婦や学生などが請負契約とういう形で執筆活動を行う。これ自体は問題でなく、掲載された記事及び画像のチェック体制があまりにもずさんであったことに今回の事件は由来する。そもそもネットでみかける記事の多くは、フリーランスのライターなどが執筆している。ライターといっても、専業で仕事をしているライターもいれば、副業にてアルバイト感覚で執筆しているライターもいる。外注という形で記事1本あたり○○円といった報酬を受け取ることが一般的だ。問題になった記事も1本あたり1,000円から2,000円くらいが相場だったと伝えられている。原稿料があまりにも安いため、ライターとしては自転車操業にて原稿を執筆しなければならない。
そうなればネットにあるサイトを参考にしながら、多少表現を変えてコピペする習慣が常態化するリスクは十分に考えられる。これが著作権侵害の根底に横たわるのではないか。そして事実確認にも時間がかかるため、事実を確認せず勝手なストーリーを執筆者がつくりあげていく。このような執筆活動が、問題となった医療サイトのライター内で蔓延していたようだ。
質の高いコンテンツを作成するには?
ネットで公開されている企業サイトは膨大な量を誇る。自社スタッフが携わることもあれば、煩わしい作業は外注することも珍しくはない。誰がコンテンツをつくろうがそれは問題でなく、作り手のコストパフォーマンスが確保されているかが焦点となる。今回のA社の問題もとても安いコストパフォーマンスが根源になっている。大量の記事を掲載するため、編集担当者のチェックがどうしても甘くなる。コンテンツの質より量を優先した結果が違法行為を生みだした。
この方程式はどの企業サイトにもあてはまる。記事の執筆を外注ライターに依頼する企業が増えている。それに付随して安い外注料で発注するケースも目立つ。コンテンツの違法行為を事前に見抜くことは大切だが、原稿を執筆するライターのギャランティを担保することも今後考えていくべきではないだろうか。
A社は問題となったキュレーションサイトを停止し、ニュースで大々的に報じられるなど企業価値を大きく損ねた。たかがネット情報では済まされない状況に追い込まれたのだ。このような事例は企業法務にとって昨今注目すべき問題である。合法的なコンテンツをつくるには作り手の待遇改善を含め、抜本的な仕組みづくりを考える必要がありそうだ。
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(記事提供/株式会社エスタイル)