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ヘイトスピーチと表現の自由の現在【コラム】

2017年05月08日

 

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アメリカ合衆国の政権が交代し、排外主義的な政策がとられる可能性がある以上、ヘイトスピーチに対する規制について日本においても一度は考えておく必要があるといえます。そこで今回は、ヘイトスピーチ、差別的言論に対する規制を素材として、表現の自由の現状と課題について考えます。

ヘイトスピーチとは

民族や国籍、人種、ジェンダー等の特定の属性を有する集団に対する差別を煽る侮蔑的表現を、ヘイトスピーチと言います。  
一般に、表現の自由が重要な憲法上の価値を有することは、言うまでもありません。
ヘイトスピーチは、名誉棄損的表現と同様、少数民族等の差別される側の名誉権の侵害を伴う侮辱的なものであり、表現の自由として憲法上保障されるとしても、低価値表現であり、それに対する規制は広く認めても憲法違反とはならないのではないか、という点が問題とされています。

日本では、ヘイトスピーチに関する事件は顕著に見受けられているとは言えません。
2009年に京都府で外国人学校が襲撃された事件では、不法行為に基づく損害賠償が通常の無形的損害よりも高額で認められており、ヘイトスピーチの価値は通常の表現の自由よりも一定程度低減するものと考えられているようです。 

アメリカにおける画期的な違憲判決

他方、多民族国家であるアメリカでは、ホワイトアングロサクソンとそうでない人々との対立が激しいため、ヘイトスピーチの問題は極めてセンシティブな問題として争われています。
ミネソタ州セントポール市の、ヘイトスピーチ行為を処罰の対象とする条例の合憲性が争われたケースにおいて、連邦最高裁のスカリア判事は表現の価値は低減するとはせず、むしろ特定の見解を狙い撃ち的に規制する見解規制 (viewpoint restriction)であり、許されず、当該条例は違憲であると論断しました。これは、いかなる言論であっても、その表現内容を発表することに対する萎縮的効果を生ぜしめることを防ぎ、一度は表現の発表を認めた上で、問題が生じれば事後的に規制するという、いわゆる"思想の自由市場論"に依拠したものとも解することができます。

ヘイトスピーチに対する法的対応の在り方

現在、日本では特定個人に対する差別的言論であれば、現行の名誉棄損罪や民事責任としての不法行為による法的対応が可能です。しかし、特定の集団に対する差別的言論、すなわちヘイトスピーチを直接規制する法律はありません。そこで、ヘイトスピーチに対する規制の在り方が問題とされます。それでは、ヘイトスピーチに対する法的対応について、どのように考えるべきでしょうか。
要は、ヘイトスピーチの価値が低減するとはいえず、かつ規制の態様が重大なものであれば、それは重要な価値を有した表現の自由に対する規制なので憲法違反となります。逆に、ヘイトスピーチの価値が低減するものであり、かつ規制の態様が重大なものでないとされれば、憲法違反にならないということになります。

この判断に際しては、ヘイトスピーチをする自由と、これによって害されるマイノリティーの名誉権を比較衡量し、ヘイトスピーチがなされる媒体やヘイトスピーチによって害される利益の内容・性質などを具体的に考慮して、慎重に検討されることが望まれます。
とりわけ、インターネットその他SNSによる発信によって、世界中に表現が拡散され得る今日においては、それによって生じ得る影響と失われる利益も大きなものとなり得る点などを考慮しつつ、時代の潮流を十分に踏まえた国民的な議論を広く行った上で判断されるべきでしょう。

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(記事提供/株式会社エスタイル)

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