弁護士の懲戒請求とは?懲戒請求後の転職は難しい?
どんな権力からも独立している「弁護士自治」を掲げている日本各地の弁護士会にとって、所属弁護士の懲戒は、市民からの信頼を確保する核心的業務のひとつです。
そのような弁護士会から懲戒を受けてしまった弁護士は、大きな社会的制裁を受けますが、はたして転職はできるのでしょうか。
そもそも、弁護士会の懲戒とは?
弁護士会は、一般の人々から「弁護士に対するクレーム」という意味での懲戒請求を受け付けています。懲戒請求を処理する業務だけでも、相当な人員の労力を割いているので、各弁護士が毎月納めている会費の大半は、懲戒処分のシステムを維持するために使われていると皮肉をいう人もいます。懲戒請求を受けて、実際に懲戒にまで至るケースは、せいぜい2~3%程度といわれます。懲戒請求のほとんどは、証拠が薄弱で事実関係が確認できないか、特定の弁護士に対する単なる言いがかりや恨みつらみレベルの内容にとどまるからです。
弁護士会の懲戒処分は、弁護士が業界内で身内といえる弁護士にペナルティを与えるわけですから、懲戒処分を受けるというのはよほどの場合です。
弁護士会による懲戒の種類は、弁護士法57条1項に定められています。
・戒告(反省を求める処分)
・業務停止(1カ月以上2年以内の範囲で業務をさせない処分)
・退会命令(弁護士活動はできないが、弁護士資格は保有)
・除名(弁護士資格を3年間剥奪される)
懲戒処分にも段階ごとに大幅な違いがあり、ペナルティとしての水準も様々ですので、一概に懲戒処分を受けたから就職ができないと断言することはできません。
戒告処分にとどまっているなら、反省を示して再就職可能!
戒告処分は、依頼人に対してつい暴言を吐いてしまったなど、いわば「若気の至り」のような若手弁護士に対して行われる注意喚起です。文書で通知されれば処分は終了です。戒告については、見解が分かれることもありますし、弁護士によっては不服を申し立てて徹底的に争うケースもあります。それくらい善悪について微妙な判断が求められるのです。
それだけに、戒告が過去に一度きりなら、よほど堅物な法律事務所でもない限り、再就職の面接で聞く耳を持ってもらえるでしょう。
業務停止処分は、戒告処分とは悪質度が違う
これに対して、業務停止処分以上の懲戒処分は、戒告処分と比べれば格段に重いペナルティです。業務停止を受ければ、それまで受任していた案件や顧問契約も、いったん解約しなければならないこともあります。業務停止期間中は、事務所の出入りや依頼人とのメール送受信も禁じられます。経済的に厳しい状況に追い込まれることもあるでしょう。
もしかすると、庶民目線から客観的に見れば懲戒処分が相当でも、実際に懲戒処分が出ないことはありうるかもしれません。それは弁護士会との見解の相違です。しかし、客観的に見て悪質な弁護士に対しては、業務停止以上の懲戒処分が出てしかるべきなのです。
弁護士が業務停止処分を受けるおそれがある行為は、おおむね以下の通りです。
<犯罪行為>
・預り金の着服(管理する遺産の引き出しなど)
・性犯罪(ストーカー、公然わいせつ、痴漢など)
<依頼人に対する背信行為>
・依頼業務の放置
・過大な報酬請求
・無断提訴
・虚偽報告
・依頼人とのお金の貸し借り
・業務ミスによって依頼者に損害を与えた
<弁護士会への背信行為>
・弁護士会費の長期滞納
<職務上の不備>
・依頼者との契約書を作成せず、のちにトラブル
・事務員に非弁活動させた
・事務員の不正を見過ごした 監督不行き届き
・預り金を、弁護士自身の私有財産と混在させた
・出し入れの目的や日付などを記載していない
罪を犯した場合は、業務停止処分のさらに上の「退会命令」「除名」に至るおそれもあります。
懲戒処分を受けた弁護士はもはや再就職できないか?
確かに懲戒処分を過去に受けたことがあるという事実は重いです。間違いなく、転職には不利に作用するでしょう。
しかし、弁護士という業界は、過去においてすねに傷を持つ人間を受け入れるカルチャーが浸透しています。刑事裁判であれば、前科があるという事実は、刑罰を加重する理由にはなりません。
同じように、懲戒処分歴がある弁護士でも受け入れる法律事務所は、諦めずに粘り強く探せば見つかるはずです。
面接まで漕ぎ着けたら、過去に受けた懲戒処分のことを包み隠さずに説明し、受けた懲戒処分に納得がいかず、それなりの正当な事情があったのなら、堂々と開陳すべきです。過去の処分歴うんぬんは関係ありません。心ある弁護士は、今現在、何ができるのかを見通そうとしています。むしろ、過去を隠そうとする行為自体で、信頼はあっさりと失墜します。
業務停止処分を受けたことがあっても、決して転職を諦める必要はありません。重要なのは、現在のあなたが真に反省し、新たな就職先のためにどのような貢献ができるかです。
何度も懲戒を受けている弁護士ならまだしも、一度きりの失敗であれば受け入れてくれる、懐の深い法律事務所はあるはずです。むしろ問われるのは、その失敗の経験を活かし、それをカバーするに余りある人脈や職務遂行能力を持っているかどうかです。
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