新人弁護士の平均年収が210万円ダウン? 弁護士の年収は、このまま下がり続けるのか
2004年、法科大学院の開始に伴って、法曹人口を大幅に増加させる政策が動き出しました。「弁護士の数が増えれば、リーガルサービスに対する世間の需要も増えるはず」という発想の下で、弁護士の大増員が行われたのです。その結果、「弁護士余り」ともいえる状況が慢性化しはじめています。
弁護士全体の年収が下がっているわけではない
弁護士人口が増えたものの、現状は飽和状態となってしまっています。そこで、再び法曹人口を絞り込む方針に転換を始めています。その結果、弁護士の平均年収は下がり続けています。
とはいえ、弁護士全体の収入が減っているわけでなく、むしろ、高収入の弁護士と低収入の弁護士とで「二極化」が進行しているというべきです。つまり、年収数千万円、あるいは億を稼ぎ出しているごく少数の弁護士が、平均値を引き上げていると考えられます。
法曹界という特定の業界ひとつ取っても、格差の広がりが生じているのです。高収入層は依然として維持されているのですが、弁護士が過剰になっていることから低収入の弁護士が増え、平均年収が下がってしまっているのです。
もともと、法科大学院の授業料に数百万円を納めて、さらに司法試験予備校に多額のフィーを払っているはずですから、弁護士にとって、トレーニング段階での初期投資は相当な額にのぼります。奨学金を得ている人もいるでしょう。それにもかかわらず、弁護士の実務において稼げないケースがあると、悲惨な実情です。
なぜ、弁護士の間で格差が生じてしまうのか
なかなか収入が得られない弁護士の中には、人もうらやむ高学歴を持つ人もいます。成績も優秀で、弁護士としての能力も決して低いわけではないでしょう。しかし、頭脳明晰で優秀ならば、弁護士として安定して仕事が来るわけではありません。
では、高収入と低収入の弁護士では、どこで差が付いたのでしょうか。
様々な理由があるかと思いますが、一つの要因としては、コミュニケーション能力の差が考えられます。大企業や勢いのある中小企業とコネクションを取り付けて、顧問契約にまで至る経営努力を怠らないのです。既存の顧客を維持しつつ、新規の顧客を獲得するために様々な会合に顔を出したり、自らイベントを企画して招待したりもしています。
あるいは、ブログやSNSなどで積極的に発信することで、個人の依頼人も獲得できています。
そして、稼ぎの中からさらに顧客獲得のための再投資を行うため、ますます格差が開いていくという寸法です。
一方で、低収入の弁護士は、たとえ能力に秀でていても、自らの力で顧客を開拓できなければその能力を発揮する場がなかなかありません。卓越した能力に恵まれていても、使う機会がなければ錆び付いてきます。それでますます依頼人も寄りついてこないという悪循環に陥りがちです。
弁護士の収入は今後どうなるのか
もし、何も策を講じなければ、弁護士間の格差はますます広がっていくでしょう。顧客獲得への再投をして、さらに人と積極的に会って話すことに時間を割けるかどうかは、収入が伸びない弁護士にとって、非情なほどの差を生じさせます。
また、過去の判例を検索したり、すでに既存のルールでできあがった基準に沿ったりしてアドバイスをするだけなら、近い将来にAI(人工知能)でもこなせる業務になることでしょう。
今まで「優秀」とされた弁護士の能力ですら、機械による入出力に置き換わる時代がやってきます。
こうした時代へ本格的に突入してしまったら、弁護士はどうすればいいのでしょうか。
実は、AIでは置き換えられることが不可能だと考えられている人間の能力が、2つ指摘されています。
それは「クリエイティブ」と「コミュニケーション」です。
クリエイティブは「企画力」です。様々な要素を組み合わせて、世間の需要を測りつつ、弁護士事業の新たなアイデアを立ち上げて、実行に移す能力です。
対人コミュニケーションの必要性は今までと変わりません。顧客獲得の能力は当分の間、AIには置き換わらないでしょう。やはり、人間は人間に依頼したいものです。
もともと、法曹人口の大増員政策は、「能力の低い弁護士を淘汰する」という競争原理のもとで導入されました。まさか、自分が「淘汰される側」になるつもりで弁護士になった人はいないでしょうが、法曹人口を増やしすぎてしまった今、法律事務所で活躍しようとする弁護士の淘汰は避けられません。
しかし、決して嘆く必要はありません。司法試験という熾烈な競争に勝ち抜いた力は、活かせる場所が必ずあります。
どのような職業でも構造改革が起こることはありますが、その中で生き残るためには、自身の能力を求められている場所に対して常にアンテナを張っておくことが良いでしょう。
最近の動向で言えば、インハウスローヤーという選択肢が一つの良い例です。
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