【コラム】定年後の再雇用に関する留意点(後編)

【コラム】定年後の再雇用に関する留意点(後編)

2017/03/07

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今回は、定年後の再雇用に際して企業が留意すべき点について、高年齢者の雇用確保措置を義務づける高年齢者雇用安定法による雇用保障を巡って争われた近時の裁判例を概観し、考えます。

高年齢者雇用安定法による雇用確保措置の義務付け

平成24 年改正高年齢者雇用安定法は、平成25年4月1日から施行されています。
高年齢者雇用安定法は平成16年の改正で、65歳までの雇用の安定を図るために、事業主に対して、(1)定年の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年制の廃止、のいずれかの雇用確保措置をとることを義務付けています。このうち最も多くとられているのが(2)の継続雇用制度の導入です。
平成24年改正は、平成25年4月から厚生年金報酬比例部分の受給開始年齢が引き上げられたことを受け、雇用と年金との連携の確保、平たくいえば年金支給の空白期間を解消することを目的としています。併せて、雇用確保措置義務に関する勧告に従わない企業名を公表する規定を設ける等、平成16年改正で義務付けられた雇用確保措置を担保する趣旨であるといえます。

労働契約上の地位確認請求の可否

高年齢者雇用安定法条の法的性格は行政取締法規であり、それ故に継続雇用を拒否された場合に労働契約上の地位確認をなし得る私法上の効力は有しないと考えることが、裁判実務に沿ったものであるとも思われます。
しかし平成24年11月29日、最高裁は継続雇用制度を採用している企業が、継続雇用の基準を満たしていると判断される労働者の継続雇用を拒否した場合、雇止め法理と同様に継続雇用の拒否について客観的合理性があり、かつ社会通念上相当といえなければ継続雇用の拒否は違法となり、当該企業の継続雇用制度を適用して労働契約上の地位を認めうると判示しました。
その後、上記の平成24年改正高年齢者雇用安定法により、就業規則における解雇事由または退職事由に該当する場合を除き、希望者全員が継続雇用の対象となったのです。
現在では、継続雇用制度を採用している事業主が、定年を迎えた労働者の継続雇用希望を拒否したことの適法性が争われた場合、原則として労働者の地位確認請求が認められる運用がなされています。

未払い賃金請求提訴を理由とした再雇用拒否

平成28年10月7日、会社に対し未払い賃金の支払いを求めて提訴したことを理由に、定年後1年毎に結んでいた再雇用契約の更新拒絶をされたことが不当であるとして、タクシー会社の元運転手10人が、社員たる地位の確認及び賃金などの支払いを同社らに求める訴訟を東京地裁に提起しました。
賃金の仮払いを命じる仮処分を申し立てた者のうち4人については提訴を理由とした雇止めが不当とされ、仮払いを命じる仮処分決定が下されましたが、この仮処分決定は、定年後の再雇用については上記の改正高年齢者雇用安定法が継続雇用を義務付けていることを強く意識することを、企業に対して求めたものであるといえます。

業種の転換の可否

平成25年2月、事務職だった元社員が、それまでと同じ事務職での再雇用を求めたにもかかわらず、定年後の再雇用として企業から1年契約の清掃業務のパート勤務を提示され、同年7月に定年退職しました。平成28年9月28日、この取り扱いが不当であるとして、元社員が企業に損害賠償などを求めた訴訟において、名古屋高裁は同社に賠償を命じる判決を言い渡しました。
同判決では、企業が元社員に対して定年退職せざるを得ないよう仕向けた疑いを生じさせるものであり、実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められないと指摘した上で、継続雇用の措置などを義務付けた高年齢者雇用安定法の趣旨に反している、と判示しています。

定年後の再雇用における業種の転換については、配転命令の適法性判断で考慮されてきた、職種限定合意の有無といった従来の労働契約一般における諸要素にとどまらず、業種転換が実質的に継続雇用の機会を奪うものにならないか、また継続雇用の措置などを義務付けた高年齢者雇用安定法の趣旨への配慮、という点についても、十分に考慮することが必要となるものと思われます。
従来、定年後の再雇用に際して、定年前の労働条件を変更する運用をしてきた企業も少なくありませんでした。しかしこれからは定年後の再雇用に際して、これに関する判例・実務の動向を踏まえて、同一労働同一賃金の原則等といった労働法における基本原則や個別の事案における特殊事情を十分考慮した取り扱いをするように注意を払う必要があるといえます。
さらに、急速に高齢化が進行しつつある現在の日本においては、全ての正社員の定年を65歳に延長する等、高齢者を正社員としてより長期間雇用し、熟練職員の能力を活用することも併せて検討することを視野に入れることも、重要な課題となるものと思われます。

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