法科大学院には行くべきなのか?メリットとデメリット

更新日:2023/04/05
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法科大学院には行くべきなのか?メリットとデメリット

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法科大学院には行くべきなのか?メリットとデメリット

社会人が司法試験やその先にある弁護士を目指す場合に、法科大学院へは行くべきなのでしょうか?
法科大学院は、修了もしくは修了見込みとなれば司法試験の受験資格が確実に得られることがメリットです。
一方、お金と時間がかかるというデメリットもあります。
ここでは、法科大学院のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。


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法科大学院とは?

法科大学院は、2004年4月に創設された、専門職大学院です。昨今では名前を聞く機会も多くなりましたが、「詳しいことは知らない」という方も多いでしょう。ここでは、法科大学院の基礎知識を解説します。

法科大学院の概要

法科大学院(ロースクール)とは、法曹(弁護士・検察官・裁判官)に必要な知識や能力を身につけることを目的とする専門職大学院のことです。
法科大学院は、2004年4月に創設された制度です。2023年1月には、フジテレビで法科大学院を舞台にしたドラマがスタートし、一般的にも認知は広がりました。

法科大学院の授業内容

法科大学院は、通常の大学とは異なり、少人数制での教育を前提としています。実務研修や体験学習などのコンテンツを取り扱っており、非常に濃い授業内容です。理論だけでなく実務も学べるため、法律に関する総合力を養えます。
法科大学院には、様々なバックグラウンドをもった人が入学するため、コースも多種多様です。主なコースとしては、法学未修者を対象とした「3年コース」と、法学既修者向けの「2年コース」があります。
また、法科大学院には、「朝から夕方にかけて会社で働き、夜は大学院で学ぶ」といった社会人学生もいます。朝から大学院に来ることが難しい社会人に向けて「夜間コース」を設定している大学も存在します。
さらに、「大学3年+法科大学院2年」で、司法試験受験資格を得られる、「法曹コース」もあります。司法試験受験資格を得るためには、法科大学院を修了する、または修了見込みの成績を取得するルートがありますが、または予備試験を合格するというルートがありますが、、5年で確実に司法試験受験資格を得られるメリットを求めて、法曹コースを選択する人もいます。

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法科大学院と法学部の違い

法科大学院と大学の法学部を混同する方もいるかもしれませんが、両者は明確に別物です。ここでは、法科大学院と法学部の違いについて解説します。

法学部

法学部は、大学に設置されている学部の一つです。法律に関することを学ぶ学部ではありますが、必ずしも卒業後に法曹の道に進むわけではありません。柔軟なカリキュラムを設計している大学では、法学部で法律を学びながら、文学部の講義を受けることも可能です。

法科大学院

法科大学院は、司法試験合格のために学ぶところです。就職先が比較的自由である法学部とは異なり、法科大学院は「法曹界」に進むのが前提となっています。

ここまでの話をまとめてみると、両者の本質的な違いは以下の通りです。

・法学部:法学について学ぶが、必ずしも法曹界に進むことを前提としているわけではない。
・法科大学院:法曹養成に特化しており、司法試験合格を目指している人を前提としている。

しかし法科大学院は、あくまで大学院の一つです。法曹の理論を学び、司法試験合格を目指すことが前提のカリキュラムとはなっているものの、「必ずしも法曹の道に進まなければならない」というわけではありません。
法科大学院を修了すると、法務博士の学位を取得できるため、これを活かして法曹とは別のキャリアを歩む人もいます。
なお、先ほども触れた通り、法学部卒業レベルの法学知識を持っているかどうかで、法科大学院のコースが変わります。両者は明確に別物ではありますが、「法曹のキャリア」という視点で見れば、1本の線でつながっているともいえるでしょう。

法科大学院に入るには?学費面からチェック

法科大学院卒業までにかかる学費は、私立・国立・公立・夜間で異なります。ここでは私立・国立・公立・夜間のおおよその学費と、その内訳を解説します。

私立

私立の法科大学院は、大学ごとに異なる学費が設定されています。たとえば早稲田の法科大学院であれば、「既修者:293万5,000円」「未修者:440万円」となっています。私立に限った話ではありませんが、未修者コースの方が長い在籍年数になるため、学費も高めの水準となっています。

国立

国立の法科大学院は、どの大学も一律で学費が設定されています。学費は、「既修者:192万円」「未修者:272万4,000円」です。通常の大学や大学院と同様、私立に比べて学費が非常に安く設定されています。

公立

公立の法科大学院は、それほど多くはありません。東京都立大学の場合、「既修者:160万8,000円」「未修者:227万1,000円」となっています。国立よりも安くなっており、さらに同大学であれば、都民割引も適用されます。住民の学費が安く設定されているのも、公立の法科大学院を選ぶメリットです。

夜間

夜間の法科大学院は、国立か私立かによって学費が異なります。たとえば筑波大学(国立)の場合、「既修者:189万円」「未修者:269万4,000円」です。一方、日本大学は、「既修者:243万円」「未修者:352万円」となります。

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法科大学院の現状

法科大学院の現状は、残念なことに「芳しい」とはいえません。
法科大学院の数および志願者・入学者の数はともに減少しています。
法科大学院は、もっとも多いときには全国で74校がありました。
ところが、2018年度までにそのうち35校が募集停止や撤退に追い込まれてしまいました。
募集停止・あるいは撤退したのは、2011年の姫路獨協大を皮切りに、大宮法科大学院大、明治学院大、駿河台大、獨協大、東海大、新潟大、信州大、島根大、鹿児島大、熊本大、青山学院大、立教大など。有名私立大学や地方の国立大学も含まれることとなっています。

法科大学院が募集停止や撤退を決めるのは、学生が集まらないことが理由です。
法科大学院の志願者数および入学者数は、2005年の時点では、志願者:4万1,756名、入学者:5,544名でした。
ところが、2018年には、志願者:8,058名、入学者:1,621名となり、志願者は約5分の1、入学者は3分の1以下となってしまっています。
存続している法科大学院の学生減も深刻です。残っている39の法科大学院のうち10校は、定員の半数以下しか学生が入学していません。

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司法試験の合格率

法科大学院に学生が集まらないのは、法科大学院修了生の司法試験合格率が低いことが原因の1つとしてあげられます。
2018年の司法試験で、法科大学院修了生の合格率は24.7%となっています。法科大学院別に見ると以下の通りです。

順位 法科大学院名 受験者 合格者 合格率
1 東北学院大学 5 3 60.0%
2 一橋大学 121 72 59.5%
3 京都大学 216 128 59.3%
4 東京大学 252 121 48.0%
5 神戸大学 301 118 39.2%
6 慶應義塾大学 301 118 39.2%
7 大阪大学 133 50 37.6%
8 早稲田大学 301 110 36.5%
9 九州大学 87 29 33.3%
10 名古屋大学 95 29 30.5%
11 白鳳大学 7 2 28.6%
12 東北大学 55 15 27.3%
13 香川大学 12 3 25.0%
14 広島大学 48 12 25.0%
15 中央大学 435 101 23.2%
16 愛知大学 13 3 23.1%
17 信州大学 22 5 22.7%
18 首都大東京 103 23 22.3%
19 岡山大学 51 11 21.6%
20 創価大学 61 13 21.3%

以上は、司法試験合格率が上位の大学となります。しかし、有名大でも合格率が、
・筑波大学 13.2%
・上智大学 14.8%
・明治大学 12.3%
・立命館大学 11.4%
と、低水準になっているところもあります。また、合格率が10%を下回っていたり、合格者数が0であったりする大学も多くあります。

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法科大学院に進学するメリット

以上で見てきたように、人気が低迷している法科大学院ですが、進学するメリットはどのようなものがあるかを見てみましょう。

①確実に司法試験の受験資格が得られる

法科大学院に進学するメリットとして第1にあげられるのは、修了もしくは修了見込みとなれ司法試験の受験資格が確実に得られることです。
司法試験の受験資格を得るためには、
・予備試験に合格する
・法科大学院を修了する
・法科大学院進学後、修了見込みの単位を取得する(その場合、最終学年で司法試験を受験できる)
の、いずれかを選ばなければなりません。
予備試験の合格率は約4%となっており、非常な狭き門だといえます。それに対して、法科大学院なら、大学を選ばなければ比較的容易に入学することができます。

②社会人でも通える

夜間部を設けている法科大学院もあるため、社会人でも通えることも法科大学院のメリットだといえるでしょう。
社会人が司法試験を目指す場合は、受験資格を得るために予備試験を選択すると、どうしても1人での勉強を続けなければなりません。
1人での勉強は、孤立感に苛まれたり、勉強度合いの進捗の判断がむずかしくなったりする場合があります。
法科大学院ならば、同じ目標をもった仲間から刺激を受けることができるため、モチベーションを保ちながら勉強を続けることが容易になります。

③教員と学生の距離が近い

大学の法学部と比較して教員と学生の距離が近いことも、法科大学院のメリットとしてあげることができるでしょう。
大人数で行われる法学部の授業とは異なり、法科大学院では比較的少人数で、教員と学生の双方向、また学生同士の多方向のコミュニケーションを取りながら授業が行われることが多くなります。教員や他の学生との対話のなかで、さまざまな発見をする機会が増えるでしょう。
また、教員には、実務家も多数います。法科大学院の在学中に法曹界への人脈を広げることも可能となります。

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法科大学院に進学するデメリット

法科大学院に進学するデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?
デメリットの第1にあげられるのは、やはり法科大学院に進学すればお金と時間がかかることです。
お金については、国立大学の場合でも、入学金が約30万円、学費は約80万円となります。私立大学の場合には、より高額であるケースが多くなります。
また、社会人であれば、2年または3年にわたって仕事と両立しながら通学しなければなりません。このことも、かなりの負担になるといえるでしょう。

加えて、先に見た通り、法科大学院を修了した場合の司法試験合格率が低いことも、法科大学院に進学するデメリットだといえるでしょう。
卒業すればほぼ確実に医師免許が取得できる大学の医学部と比べると、法科大学院は大きく異なるものとなります。

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社会人が法科大学院を目指すなら

法科大学院で夜間コースを併設している数は非常に少なく、さらに修了するまでに、全日制よりも長い時間が必要となります。ハードルは高いですが、強い意志をもっているのであれば、目指してみるのもいいでしょう。
社会人が法科大学院を目指す場合、まず入試に合格しなければなりません。未修者であれば、小論文試験となるのが一般的です。大学院に入るために、高度な法学の知識が要求されるわけではありません。その意味では、入学に関してはそれほど難しくないでしょう。

しかし、社会人が法科大学院を目指す際、難しくなってくるのは「入学後」です。夜間コースの法科大学院に通う場合、朝から夕方にかけて仕事をし、夜に法科大学院で学ぶという生活リズムになります。
土曜日は基本的に一日中授業を受け、日曜日は一週間で学んだ内容の総復習を行います。もちろん、プライベートの時間はごくわずかになってしまうでしょう。仕事が極端に忙しい時は、学業との両立が難しくなる恐れもあります。

法科大学院一覧

法科大学院の一覧をエリアごとに紹介します。

国公立

・北海道/東北エリア:北海道大学、東北大学
・関東エリア:東京都立大学、千葉大学、筑波大学、一橋大学、東京大学
・東海/北陸/甲信越エリア:金沢大学、名古屋大学
・関西エリア:京都大学、大阪大学、大阪市立大学、神戸大学
・中国/四国エリア:岡山大学、広島大学
・九州/沖縄エリア:九州大学、琉球大学

私立

・関東エリア:学習院大学、慶應義塾大学、駒澤大学、上智大学、創価大学、専修大学、中央大学、日本大学 法政大学、明治大学、早稲田大学
・東海/北陸/甲信越エリア:愛知大学、南山大学
・関西エリア:同志社大学、立命館大学、関西大学、関西学院大学、甲南大学
・九州/沖縄エリア:福岡大学

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法科大学院進学後の就職先

法科大学院に進学し、修了した後のキャリアは、司法試験に合格した場合には、もちろん法曹三者(検察官・裁判官・弁護士)としての就職が第一にあげられます。一番進む方の比率が多い弁護士になる場合は、具体的な就職先として、
・法律事務所
・一般企業(インハウスローヤー)
がメインとなるでしょう。もし早いタイミングでの独立を希望する場合も、独立後のノウハウを身に着けるために法律事務所にてまずは経験を積むのが一般的です。
また、司法試験に合格できなかった場合でも、企業の法務部などへ就職することもできます。


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法科大学院卒の求人情報

法科大学院卒の求人情報

ここでは、法科大学院卒の求人例を紹介します。

※法科大学院修了生歓迎※家賃保証事業を展開する東証プライム上場企業から法務求人です!

・ポジション:法務担当
・雇用区分:正社員
・仕事内容:各種契約書の審査・作成・管理、法律相談の対応、知財管理、取引先調査(契約審査・法務相談等)
・必要な経験/能力など:「法科大学院修了生」「事業会社、もしくは法律事務所での法務経験がある方」「総務庶務を現在行っていて、法務全般へ業務領域を広げたい方」のいずれか

東証プライム上場企業/法務スタッフ/~400万円/プリント配線板トップシェア/東京本社勤務

・ポジション:法務スタッフ
・雇用区分:正社員
・仕事内容:国内外の企業と締結する各種契約書の審査およびドラフティング、品質・知財クレーム等への交渉方針の検討・助言、社外弁護士と社内事業部門の意見の調整、総会の対応など。
・必要な経験/能力など:「法科大学院修了生の方」「法学部卒の方」「法務の実務経験がある方」のいずれか

上場/webマーケティングや語学事業を行う企業/法科大学院修了生の募集

・ポジション:法務担当
・雇用区分:正社員
・仕事内容:契約書の作成・加筆修正等レビュー、当社IT事業において制作運用している情報サイトが景表法や各業法の広告規制に違反していないかのリーガルチェック、登記および各種届出書類作成、契約書・各種規程の管理・改定業務、M&A関連のプロジェクトサポート、子会社管理など。
・必要な経験/能力など:法科大学院修了生または短答式合格者(予備試験でも可)の方

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まとめ

法科大学院は、入学は比較的容易であるため、司法試験の受験資格を得るためにはおすすめです。
ただし、お金と時間がかかるわりには、司法試験の合格率は低いものとなっています。
法科大学院に進学する場合には、進学することのメリットデメリットを認識した上で、司法試験合格の目標にコミットすることが重要です。

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<参考>
法務省「平成30年司法試験法科大学院等別合格者数等」
日本弁護士連合会「司法試験合格者の状況」
文部科学省「各法科大学院の平成30年度入学者選抜実施状況」

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この記事を監修した人

大学卒業後、旅行代理店にて法人営業を約3年。20代でMS‐Japanへ入社。
企業の採用支援(リクルーティングアドバイザー)を約8年、求職者の転職支援(キャリアアドバイザー)を約5年経験。
両ポジションでチームマネジメントを経験し、キャリアアドバイザーとしては複数回にわたり支援実績数NO1を獲得。リクルーティングアドバイザーにおいても入社1年半後にチームマネジメントを経験させていただきました。現在は子育てと両立しながら、常に社内でトップ10以内の採用支援実績を維持。
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