【コラム】刑事弁護の未来―最近の薬物犯罪から考える刑事弁護の可能性―

【コラム】刑事弁護の未来―最近の薬物犯罪から考える刑事弁護の可能性―

2016/08/05

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各界の著名人による薬物犯罪に関する報道が後を絶ちません。こうした中、平成28年6月1日から一部執行猶予制度が施行され、これを認める判決が相次いで出されています。
従来、刑事弁護のみでは弁護士業を成り立たせることは難しいともいわれてきました。
今回は、近時の薬物犯罪への対応を契機として刑事弁護の視座を転換し、弁護士の就職難や業務減少という現状において、むしろ今後は刑事弁護が弁護士の職務として未来あるものになるのではないか、という点について考えます。

注目を集める薬物犯罪

近時、著名人による薬物犯罪が耳目を集めています。とりわけ、現役時代に輝かしい実績を残した元プロ野球選手が薬物を使用したという事実は多くの人に衝撃をもたらしました。また、この事案では、その元選手が自ら保護観察を付することを求めたという点も話題となりました。これは、情状弁護の戦略上、反省したことを示すためとの見方もあります。もっとも、薬物犯罪の再犯率は高く、薬物の依存性ゆえに独力での更生は難しいことから、一日でも早く更生したいとの真意に基づくものであるとの見方も否定できないところです。
結局、裁判所の判断は保護観察には付さないという執行猶予付の判決でした。

薬物犯罪者の現在

法務省が発表した「平成27年版 犯罪白書」によると、覚せい剤犯罪による入所受刑者の再入所率は、男性は76.3%、女性は55.3%となっており、再犯率が極めて高いという特色があります。これは、薬物事犯検挙者の刑事施設における更生のための処遇が奏功していないことの証左ともいえます。
刑事施設では、薬物から離脱するためのプログラムが行われます。しかし、刑務作業に充てられる時間が一日8時間近くを占めているため、実際のところ、施設内処遇には再犯防止について多くを期待できないといわざるを得ません。
このことから、早期に治療施設や自助グループ施設において社会内処遇をするべき必要性が痛感されるところです。

一部執行猶予制度の導入

6月1日に施行された一部執行猶予制度は、薬物犯罪だけに限定されていない、刑法で認められたものです。薬物犯罪については、たとえ刑法上の要件を充足していなくても、社会内処遇をすることが必要かつ相当と認められるときには保護観察を付けて一部執行猶予とすることが認められるという内容になっています。
この制度は、早期にダイバージョンの道を開き、社会内処遇が更生にとって効果的であるといえます。

それでは、一部執行猶予制度施行後、実際の刑事司法ではどのような運用がなされているのでしょうか。
施行日前は、弁護人のみならず、検察官も精密司法の担い手とされてきたが故にどのような運用がなされるか、懸念していたことが予想されます。そして、実際には、施行日の翌日である6月2日の千葉地裁判決を皮切りに、薬物犯罪について一部執行猶予を認める判決例が相次いで出されています。これは、実際にも、社会内処遇が再犯防止と受刑者の社会復帰という要請によりよく応え得るものとして求められていることを示唆しているといえます。

刑事弁護のツール・オプションの多様化とこれからの刑事弁護

これまでは、自由獲得という観点から、保護観察を付されない執行猶予の方が、依頼者(犯罪者)にとって価値が高いとも思われてきました。 
しかし、こうした固定観念は劇的な変化を余儀なくされたと考えられます。一部執行猶予制度を認める裁判所の判断が相次いで出されている現在においては、刑事弁護は依頼者の自由獲得を考えればよいというものではなくなりました。社会内の更生のための施設との連携を図りつつ、自ら意欲を強く持つ依頼者の更生という観点を中心とした刑事弁護をすることも、弁護士の重要な職務だと思われます。 

薬物事犯の弁護に限らず、日本の刑事司法においては、アメリカをはじめとする諸外国と異なり、検察側に比して、弁護側に武器が少ないといわれてきました。
しかし、公判前整理手続の導入を皮切りとして、最近の刑事弁護のツール・オプションの多様化には、目を見張るものがあります。今後も、取り調べの可視化等を含めた刑事訴訟法の改正が施行されることになります。こうした新しい制度の導入と依頼者のニーズの変化に即応することにより、弁護士の就職難や業務減少が顕著な昨今において、刑事弁護が古くて新しい職務として注目される時代が到来するものと思われます。 
依頼人の人権を擁護しつつ、犯罪を抑止するという社会的正義を実現する―こうした弁護士の使命に立ち返りつつ、依頼者の真意に即応した職務を遂行し、依頼者の信頼を得ることにより、刑事弁護はより開かれた未来ある職務となり得るのではないでしょうか。

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