【弁理士が語る知財のあれこれ:第3回】特許事務所における報酬体系の違いって?

【弁理士が語る知財のあれこれ:第3回】特許事務所における報酬体系の違いって?

2016/10/07

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ソナーレ特許事務所の右田(みぎた)です。知財コラムへの寄稿は2回目となります。前回の第1回コラム(http://www.legalnet-ms.jp/topics/2016/003335.html)では、「弁理士の置かれる現状とこれから」と題して、輝かしいとは言えないかもしれないけれど決して暗くはない弁理士の将来像について書かせていただきました。今回は、転職をご検討中でこのサイトを訪れたみなさまにとってきっと関心が高いと思われる、特許事務所における報酬体系について書きたいと思います。

特許事務所の「年功序列型」と「成果主義型」の違い

報酬体系を単純に「年功序列型」と「成果主義型」の2つに分けると、特許事務所の勤務弁理士の報酬体系は成果主義のところがやや多いかなと思います(統計をとったわけではありません)。

年功序列型では、年齢や勤続年数に応じて基本給が少しずつアップし、残業時間に応じて残業代という形で賃金が支払われます。実力や実績により昇給速度が変動することもあるでしょうが、その年にどれだけの仕事をしたかということは原則として個人の給与には反映されません。その事務所の成長と発展にずっと貢献してきてくれたことに報いるという理念が根底にあります。企業の業績評価に近いといえます。

一方の成果主義型では、個人の業績を評価して当該年度の賞与や翌年の給与を変動させます。残業代が支払われているとしても賞与で調整されるため、勤務時間は年収に影響しないことになります。弁理士は一匹狼の士業なので、プロ野球選手などと同じく個人の業績で報酬を決定すべきだという考え方ですね。特許事務所の業務は、特許出願にしても中間処理(※1)、審判事件、鑑定、コンサルティングなどにしても、1件1件の区切りが明確ですし、また各案件を基本的に一人の担当者が処理するため、個人ごとの業績を定量評価することが比較的簡単です。
(※1)中間処理とは、特許庁から送られてくる「拒絶理由通知」に対して意見書や手続補正書といった書面を提出して応答する手続のこと。案件の処理時間は特許出願よりも中間処理の方が短いことが一般的です。

業績の定量評価は処理件数や売上額に基づいておこないます。処理件数でおこなう場合は、特許出願1件=2ポイント、中間処理1件=1ポイントなどとポイント化して1年間のポイント数の合計で業績を評価することが一般的です。売上額で業績評価する場合はもっと簡単で、その人が担当した案件の請求額(売上額)を単純に合計します。そして、年間ポイントや年間の売上額の合計を当該年度の賞与や翌年の給与に反映させます。反映させる比率は事務所によりまちまちで、ポイントや売上額と年収がシビアに正比例する完全歩合制のところもあれば、賞与に少し差がつくだけという緩やかなところもあります。

それぞれの問題点はどんなところか

しかし、年功序列型にも成果主義型にも問題があります。
年功序列型の問題点は明らかで、仕事をしない人が現れることです。仕事をしなくても評価が横並びであればどうしてもやる気は減退します。残業代を稼ぐため長時間事務所にいることが目的化するおそれもあります。
成果主義型にも問題があります。各案件を単純なポイントや売上額だけで評価するとなると案件の処理量にばかり気を取られるため、「楽な案件」をみんなでとりあったり仕事が雑になったりしがちです。これでは事務所の雰囲気が悪くなり、顧客からの信頼も損ないます。
成果主義を採用する事務所の中には、個人の業績を様々な観点から多面的に評価することでこのような問題を防ごうとしているところもあります。案件の難易度、書面(明細書)の品質、顧客への提案(※2)の量、所内のメンバーへの指導ぶり、顧客との関係構築への貢献ぶり、などを総合的に考慮して個人の業績を評価するわけです。この観点をどのように設定するかというところに事務所(所長)の考え方があらわれます。
(※2)特許出願だけでみても、特許の権利範囲を顧客側の想定よりも拡張可能であることの提案、発明の変形アイデアの提案、実施例の採否の提案などがあります。

特許事務所に転職する際に、チェックしておくべきポイント

多くの特許事務所のHPには「明細書の品質に自信があります」とか「提案型の業務を行っています」などの売り文句が並んでいます。その売り文句が嘘でないならば、明細書の品質や顧客提案を高いレベルで維持するために、各担当者の案件に所長や上席の弁理士がしっかりと関与してこれらの達成度を評価し、そしてその達成度を担当者の業績評価に組み入れているはずです。私の事務所でも行っています。

特許事務所に転職されるにあたっては、転職先の事務所における報酬体系を面接時にしっかりと質問してみてください。年功序列型か成果主義型かというだけでなく、どのような観点で個人の業績を評価しているかを突っ込んで聞いてみてください。そして一方で、その事務所の所長さんが大切にしている理念もさりげなく聞いてみてください。所長さんが口にする理念と業績評価のやり方がばらばらだとしたら、そこには(良くない意味で)何かがあるはずです。

特許事務所は企業に比べて経営者(所長弁理士)の独自色が強く、また外から見ただけではその事務所が素晴らしいのか真っ黒なのかは分かりにくいでしょう。転職した後で後悔するのでは遅いですから、候補者(=貴方)の側から面接の中で事務所の情報を引き出していくことが大切だと思います。業績評価のやり方について突っ込んで質問する面接候補者は多くありません。多くないということは、このような質問をすることで候補者の中で貴方がキラリと存在感を示せるということでもあります。このコラムを御覧になった方が、自分にあった事務所に転職し、そして成功されることを祈っております。

(第3回終)

【弁理士が語る知財のあれこれシリーズ】
【弁理士が語る知財のあれこれ:第1回】弁理士の置かれる現状とこれから
【弁理士が語る知財のあれこれ:第2回】特許事務所で働くってどんな感じ?

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◆執筆者:右田俊介弁理士(ソナーレ特許事務所 代表弁理士)
事務所HP http://www.sonare-ip.com/index.html

 

 

 

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