【コラム】最低賃金の引き上げがもたらす企業社会の行く末とは?

【コラム】最低賃金の引き上げがもたらす企業社会の行く末とは?

2016/10/19

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最低賃金を巡る動きが慌ただしい。政府は最低賃金を引き上げ、労働者の生活向上を狙う。賃金が上がるならばうれしい限りだが、話はそう単純ではないらしい。
賃金が上がり恩恵を受ける従業員もいれば、長期的には職にありつけない労働者が増える可能性もあるという。

最低賃金法の呪縛

そもそも最低賃金とは、労働者が安定した生活を送るための賃金の最低額である。これは最低賃金法という法律により担保され、事業者は絶対に守らなければならない。仮に事業者と労働者の間で最低賃金を下回る労働契約がなされても、それは無効となる。また差額分の支払いも発生する。さらに同法は50万円以下の罰金の規定があり、厚生労働省は最低賃金を守るよう企業に圧力をかけている。

平成28年10月度時点の最低賃金は全国平均で823円。現政権は中期目標として1,000円を目指すという。厚労省の審議会が目安となる金額を提示して、最終的に各都道府県が地域における最低賃金を決定する。このため最低賃金といっても地域格差が生じ、もっとも高い東京都は932円、次いで神奈川県が930円、大阪府が883円となっている。東京、大阪という大都市が平均を上回るのは物価水準を考慮しているためだ。地方へ行くほど平均額を下回っている。

平成25年10月度の最低賃金は764円。その当時から現在の過去3年で59円アップしている。たかが59円と思うかもしれないが、時給自体が低いため伸び率はかなり高い。今年度の引上げ目安としていた20円超を実現した形となり、最低賃金の上昇は今後も続きそうだ。

引き上げ論の功罪

最低賃金引き上げの恩恵を受けるのは、アルバイトやパート従業員。最低賃金レベルで働く労働者は約750万人いるという。これはかなりの数だ。最低賃金が引き上げられれば、消費が増え、景気拡大に寄与すると政府は期待している。上手くいけばよいだろうが、いくつかの課題も浮かび上がる。

最低賃金の引き上げの主な目的は3つあるとされる。
・消費拡大による景気浮揚
・貧困対策
・人手不足の解消
このうち、貧困対策については非正規雇用者の収入が増えれば、低所得に甘んじる単身者や貧困層を救え、生活保護などの社会保障費の削減につながるとの思惑がある。

ところが今や労働者の40%まで達した非正規雇用者の大半はパート主婦や学生アルバイトだ。パート主婦は世帯主の夫の収入を補助する目的で働いている。控除の対象となる「103万円の壁」や「130万円の壁」「106万円の壁(10月より)」は有名だが、パートで働く妻はあえて働く時間をセーブして夫の扶養に入ることを選択している。

学生も実家からの仕送りや小遣いの不足分を補うためにバイトをしている。いわゆる貧困層とは違う。
ここで問題なのは、時給がアップすればそれだけ年収が増えるので、「壁」を超えないよう労働時間を減らすパート主婦が増えるという懸念だ。
そして忘れてはならないのが企業側の人件費の問題。非正規雇用者の割合が加速したのはバブル経済崩壊の時代にさかのぼる。企業の売上げが頭打ちとなり、収益も伸びない、この打開策として正社員をパートやアルバイトに置き換える動きが目立ってきた。また、業務の外注も増え、請負業者の従業員もパートが大半を占めるという構図がつくられていった。

非正規雇用者はサービス業や小売業で顕著にみられ、体力の弱い企業がとても多く、その企業に果たして時給をアップするだけの余力があるのかも疑う余地がある。最低賃金の引き上げを強引に進めると経営危機に陥る企業も少なくないだろう。
シングルマザーやフリーターなど自立を迫られている人たちには大幅な賃金アップは有効だ。ただ、これも高い労働スキルを身につけ、転職市場での価値を高めることが脱・貧困への近道だと主張する識者もいる。

未来の企業社会

最近では、企業の人工知能(AI)の活用が話題になっている。AI、ロボットが将来の人手不足解消の切り札になるというのだ。飛躍的な技術革新によってITが主役となり、人手不足どころか人員過剰が発生するのではないかといわれたりもする。

企業は過剰人員を抱え人件費が重くのしかかるが、最低賃金の引き上げで賃金は抑えられず、雇用形態も正規、非正規の垣根が低くなっている。また、雇用の流動化が進み、才能や能力のある労働者は中間層にとどまり、評価の低い労働者は貧困から抜け出せず、格差はさらに拡大することも予想される。

今の子どもたちが社会の主力として働く20年、30年後の未来から現在の最低賃金引き上げ議論はどのように映るのだろう。最低賃金の引き上げは薬にもなれば毒にもなる。同一労働同一賃金の議論と併せ、正社員にも影響する話だ。右肩上がりの業績ならば問題ないが、そうでなければ商品やサービスに価格を転嫁して人件費を確保するしかない。最低賃金引き上げが正しいかどうか直ぐには答えがでないものだ。

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