【コラム】政策形成訴訟の新動向

【コラム】政策形成訴訟の新動向

2016/11/11

20161111-column.jpg平成28年9月21日、新方針が決まり次第、もんじゅ廃炉を正式決定する方針を政府が発表しました。高速増殖原型炉「もんじゅ」については、かつて、この設置許可処分の無効確認を求めた訴訟が提起されました。
近時、原発訴訟のような政策形成を目的とする訴訟は、訟務局の復活などによって、新たな展開を見せつつあります。そこで、今回は、本来非政治的であり、かつ受動的な司法によっても、実質的に政策決定にコミットしうる政策形成訴訟について考えます。

政策形成訴訟と具体的な政策の実現

原告の個別の権利利益の救済のみならず、政策形成を目的として提起される訴訟を、政策形成訴訟といいます。
訴訟の形をとってはいますが、政府の政策変更の実現を主眼とするものであるといえます。つまり、裁判で勝訴し、世論を変更・形成することによって、政府の政策決定についての判断に変更を迫ることを目的とする訴訟です。その典型的なものとして、原発訴訟が挙げられます。

多くの政策形成訴訟の形式は国家賠償請求訴訟であり、裁判によって判断されるのは当該損害賠償請求権の存否です。しかし、この請求に際して、原告側が広く紛争の全面的な解決を図る案を具体的な政策として掲げることができれば、政策形成訴訟となり得ます。
社会的な背景のある事件に関する政策形成訴訟では、あくまでも個別の訴訟の対象となる訴訟物の存否について判断されるものの、それに際して、社会通念に照らし、広い視野をもって裁判がなされることによって、初めて社会的な広がりのある紛争の抜本的解決が図られることになるといえます。 

原告が少人数では、政策形成訴訟としての実効性は期待できません。数十人、数百人といった大規模の原告を結集することが必要となります。また、原告以外にも多くの被害者がいる等の社会的背景がある、広がりをもった事件であることも要します。さらに、多数の者を組織・運営し、その意思統一を図った上で訴訟外の活動をすることも、政策形成訴訟の目的を実現するにあたり、重要となります。具体例として、市民団体によって行われた首相官邸や国会議事堂の前で政府に抗議する東日本大震災後の脱原発デモが挙げられます。
こうした特質を有するため、政策形成訴訟は「集団訴訟」と呼称されることもあります。 

政策形成訴訟の転換期

政策形成訴訟は、平成13年に、ハンセン病訴訟熊本地裁判決で国が敗訴した後、当時の小泉首相が控訴を断念し、和解による解決を図ったことを嚆矢として、大きな変化を遂げることになりました。
平成16年に、筑豊じん肺訴訟、関西水俣病訴訟において、国が一部敗訴する最高裁判決が下されました。その後、平成17年の行政事件訴訟法の改正で原告適格を拡大する改正がなされ、また同年に小田急高架訴訟における原告適格を認める最高裁判決が下されました。こうした動きに後押しされ、C型肝炎訴訟、原爆認定訴訟など、政治的解決が図られた訴訟が増えています。
現在も、諫早湾干拓訴訟、辺野古沖埋め立て訴訟、原発訴訟等、国の重要政策に関する重要大型訴訟が多数係属し、政策形成訴訟は複雑困難化しつつ増大し続けている状況にあり、政策形成訴訟は大きな転換期にあるといえます。

こうした中、平成27年4月に、平成13年に廃止されていた訟務局が復活しました。
近年、重要大型事件が増大し、問題となる事案の内容も複雑困難化していることから、政府の一元的な対応のための訟務に関する指揮権限を強化し、政府として予防法務の充実や訟務機能の充実・強化を図るというその趣旨に基づくものです。
訟務局の復活は、平成24年に国際司法裁判所が日本の調査捕鯨を商業捕鯨であると認定し、中止を命令したという、いわば日本が全面敗訴した事件があったことから、国際的な紛争にも法曹資格者を関与させるべきとの政府の意向が反映されて実現したという経緯があります。そのため、国内にとどまらず、国際的な紛争への対応も期待されるものであるといえます。
また、諫早湾干拓訴訟に中立的な立場から助言し、関係当事者の訴訟にかかる負担を最小限化することにより、紛争激化を未然に防止するという、紛争当事者である国民のための予防法務としての機能も果たしています。

政策形成訴訟の展望

平成26年10月に、最高裁は、アスベスト被害に関する国の責任を初めて認める判決を下し、これを受けて、政治的解決への途が開かれました。こうした動向に照らしても、今後、政策形成訴訟が引き続き増大することが予想されます。また、従来からあった六価クロムなどの公害訴訟等にとどまらず、マイナンバー制度の導入などにより生じることが懸念されるプライバシーに関する新たな政策形成訴訟が増大することも考えられます。さらに、勝訴することが極めて難しいとされてきた原発訴訟にも変化の兆しが訪れるかもしれません。
こうした政策形成訴訟の動向は、法律家にとって、訴訟の形式をもって政策形成にコミットすることによって社会正義を実現するチャンスを広げるものであるといえるでしょう。

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