【コラム】改めて考える、企業の過労死問題の実態

【コラム】改めて考える、企業の過労死問題の実態

2016/12/12

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2016年10月、厚生労働省が国内企業における労働の現状や過労死を予防するための対策についてまとめた、平成28年版「過労死等防止対策白書(以下・過労死白書)」の内容が公表されました。
この過労死白書の公表は、世界でも例を見ない取り組みであったことに加え、その内容から労働環境の厳しい現状が浮き彫りになったために、大きく注目されています。

企業法務に関わる弁護士にとっても、過労死の問題は特に注意しなければいけないリスク要因の一つです。過労死の現状を把握するためにも、この白書について注目する意義は充分にあるといえるでしょう。

過労死白書が作られた背景とは?

過労死白書の公表と同時期に、2015年に起こった大手広告代理店社員の自殺が、長時間労働による過労だったと労災が認められ、それを受けて同社の本社に東京労働局の特別対策班が抜き打ち調査に入りました。
このように、過酷な労働によって生じる過労死は、以前から日本の企業における重大な問題として危惧されてきましたが、なかなか改善には結び付かず、その結果、2014年11月に過労死等防止対策推進法が施行されました。

この法律の目的は、過労死を起こした企業を取り締まるものではなく、あくまでも企業に対して過労死の防止を啓発する点にあります。そのため、この法律の内容は政府が過労死の実態に関して調査と分析を行い、しかるべき対策を講じることに重きをおいています。過労死白書もこの法律に基づく取り組みの一つで、毎年過労死についてまとめ、公表するようになりました。

公表された過労死白書には、過労死の現状や対策の実施状況など、過労死に関する実情について記載されています。
これを見ると、年間の平均労働時間がおよそ1,800時間とアメリカに並んで多いことや、正社員の1週間の平均残業時間は男性で8.6時間、女性で5.2時間だということがわかります。また、いわゆる「過労死ライン」といわれている1カ月の時間外労働が80時間を超えている正社員がいる企業の割合は、22.7%にのぼることが明らかになっています。
さらに、パワハラなどに関する相談件数や精神障害の労災請求件数も上昇しており、精神的なストレスも依然として大きな問題となっています。
このように過労死白書の内容は、日本の労働環境の厳しい現実をあらためて突きつけるものとなりました。

弁護士に求められる、過労死対策の法務

過労死白書によると、勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数の一番多い年は2011年の2,689人。その後、減少傾向にあり2015年には2,159人になりましたが、その数は決して少ない数ではありません。なぜなら、勤務問題の原因に挙げられている「仕事疲れ」で自殺した人が3割を占めているという結果が出ているからです。
過労自殺などで起訴された場合、大企業だと賠償金額が1億円を超えることがあります。中小企業でも起訴されると高額な賠償金を支払う可能性があるので、経営のことを考えても早くから手を打っておくべきです。

過労死を減らすためには、企業法務に関わる弁護士の力も必要となってきます。その中でも重要なこととして、過労死防止マニュアルや、従業員に過労に関して問うチェックシートの作成の推進、コンプライアンスに基づいた業務軽減措置の整備のサポート、労災保険の加入の実態の把握および促進といった活動があげられます。特にマニュアルやチェックシートの作成は、労働環境を改善させるための基本的かつ重要な手段となります。

労働者の環境改善については、今までも多くの企業や弁護士の方たちが真剣に取り組んでいることと思います。しかし、過労死白書によって示されたデータは、まだ努力が必要な現実を浮き彫りにしています。
過労死は社会的、法務的にも大きなリスクであることを専門家の立場から指摘し、さらに労務管理や、従業員のケアを行う人たちと協力して環境の改善に努める必要がありそうです。

 
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