【コラム】定年後の再雇用に関する留意点(前編)

【コラム】定年後の再雇用に関する留意点(前編)

2017/03/01

20170301column.jpg

定年後の再雇用は、熟練社員の活用による企業の利益や労働者の生活保障、及び社会保障の負担軽減のため、企業及び政府にとって重要な課題とされています。
もっとも、少子高齢化が急速に進行しつつある日本の現状に照らすと、定年後の再雇用を行う場合、法的にも未知な問題に直面するリスクを伴うことが予想されます。
そこで、今回は近時の裁判実務を基に、定年後の再雇用に関する留意点について考えます。

同一労働同一賃金の原則の射程と労働契約法20条違反

平成28年5月13日、定年後に再雇用されたバラセメントタンク車の運転手らが、定年前と同じ業務であるにもかかわらず賃金を下げたことは違法であり、会社に対し定年前と同じ賃金を請求する訴えを提起し、東京地裁はこれを認めて労働契約法20条に違反するとして、定年前の賃金との差額分を支払うよう同社に命ずる判決を下しました。 

労働契約法20条は平成24年に創設された規定で、無期雇用労働者と有期雇用労働者との間の不合理な差別を禁じる内容となっており、この判決は賃金格差について同条違反を認めた初の判断となりました。
会社は定年後の再雇用に際し、業務内容が定年前と全く同じである場合に賃金を下げてよいか、という点について、再雇用時の賃下げで賃金コスト圧縮を必要とする財務状況にある等の、会社特段の事情の有無を十分考慮して、再雇用の判断をする必要があるということを示しています。

また、同判決では、業務は変わらないまま賃金を下げる慣行が社会通念上、広く受け入れられているとは言えないと認定し、賃金減額をコスト圧縮の手段とすることは正当化されないと判示しています。
こうした認識は、企業に十分に知れ渡っていないのが実情です。企業には、これまでの慣行や認識を改め、定年後の再雇用をする際にも同一労働同一賃金の原則が及ぶことを十分考慮した上で慎重に賃金を決定することが求められるでしょう。
裁判で企業側は、運転手らは賃下げに同意していたと主張しましたが、判決は、同意しないと再雇用されない恐れがある状況だったことから、この点も特段の事情には当たらないと判断しています。
今後は、定年後の再雇用に際し、労働者に対する同調圧力とならないように企業側の姿勢に十分に注意を払うことも求められるようになるといえます。

労働契約法20条に違反しないとした逆転判決をどう捉えるべきか

ところが同年11月2日、東京高裁は、定年後に賃金が引き下げられることは社会的に受け入れられており、一定の合理性があると判断して上記一審判決を取り消し、労働者側の請求を棄却しました。また、同社が再雇用の労働者に調整給を支払って正社員との賃金差を縮小する努力を払っていたこと、退職金を支払っていたこと、及び同社の運輸業の収支が赤字であったという事情を考慮し、原告の賃金を定年前と比べて約20〜24%減額したことは、同規模の企業の減額割合の平均よりも低いため不合理とは言えず、労働契約法20条に違反しないと判示しました。

両判決の判断が相反した理由は、労働契約法20条の適用における考慮要素を異にした点に求められます。同法同条は、正社員と有期雇用の待遇格差が不合理であると認められるかどうかを判断する際、
(1)業務の内容
(2)配置などの変更の範囲
(3)その他の事情
という3つの要素を考慮すると規定しています。一審判決は、再雇用有期契約社員と正社員は(1)(2)が同じであることを重視して、格差は不合理であるとしました。
これに対して、高裁は(1)(2)は同じであるが、(3)その他の事情として、再雇用での賃金減額が一般的であると認定し、且つこの点を重視し、逆の結論を導いたものと評されています。

平成28年3月から、政府は、同一労働同一賃金の実現を図るために、正社員と非正社員の待遇格差はいかなる場合に合理的であるかという点を示すガイドラインを策定する作業に入っています。そのなかでは、賃金などの労働条件について慎重に判断する方向で進められています。
上記の高裁判決は、政府も重視している同一労働同一賃金の原則への配慮が十分でなかったものではないでしょうか。もっとも、この高裁判決からは、同一労働同一賃金の実現にはガイドラインの策定だけでは不十分で、法改正が必要だという指摘もなされています。
そうであるならば、そのような法改正の実現が図られることをも見越して、企業としては一審判決に沿った運用をすることが法的リスクを可能な限り回避でき、妥当であると考えるべきでしょう。 

次回は、高年齢者雇用安定法による雇用保障を巡って争われた近時の裁判例を概観し、定年後の再雇用に際して企業が留意すべき点について引き続き考えることにします。

【コラム】定年後の再雇用に関する留意点(後編)

【この記事を読んだ方におすすめのコンテンツ】
◆≪リーガル領域の転職はプロにおまかせ!≫無料転職サポートサービスとは?
◆≪まずは気軽に話を聞いてみたい、そんな方へ≫無料転職相談会・無料転職セミナーはこちら

会員登録がまだの方

転職者と求人側の現状や希望をコンサルタントが常に分析。
適職とのマッチングを第一に考え、
マンツーマンで質の高い求人情報をご提供します。

求人をお探しの方

法務・弁護士・弁理士等、法律領域トップクラスの転職サポート実績。企業法務や法律事務所、特許事務所の求人情報が豊富に掲載されています。

登録はお済みですか?

転職者と求人側の現状や希望をコンサルタントが常に分析。適職とのマッチングを第一に考え、マンツーマンで質の高い求人情報をご提供します。