外資系企業の法務に転職する際のポイントとは
日系企業と外資系企業では、それぞれで企業風土も異なり、部門・部署レベルで違いが見受けられることも少なくありません。
法務職についても同様で、純粋な日本法にもとづいて訴訟対応を行う場面以外では、外資系独特のルールにのっとって業務を進めていくことが求められます。
転職活動においても、日系企業と同じような戦略を立てることが、必ずしもプラスに働くとは限りません。
ビジネスの要素・法律の要素・コミュニケーションの要素をバランスよく兼ね備え、実務に従事する必要があります。
この記事では、外資系企業の法務に転職を検討しているビジネスパーソン向けに、転職時に押さえておきたいポイントをいくつかご紹介します。
外資系企業の法務の仕事の特徴とは?
基本構造としては、日系企業も外資系企業も一般的な法務の仕事内容に違いはありません。
契約法務、組織法務、訴訟法務、コンプライアンス法務など、法務スタッフのチームワークで諸々の業務を処理していく形になります。
ただ、多くの場合、外資系企業は事業規模が日系企業と大きく異なるため、以下のような点で日系企業との違いが見受けられます。
上司や同僚との協力体制の違い
日系企業と外資系企業では、上司・同僚との関係性(仕事上の線引き)に大きな違いが見られます。
日系企業が、どちらかというとなだらかな人間関係の下で協力体制が敷かれているのに対して、外資系企業は厳密に「スタッフが責任を持つ範囲」が定められていることが多い傾向にあります。
報告・連絡・相談をすべき相手が厳然として存在しており、自分の職域や義務が明確に定められている中では、十分な協力が望めない可能性もあります。
仮に、協力してもらえたとしても、その段階で「実力不足」と判断される恐れもあるので、自分が責任を持つ業務範囲ではしっかり結果を出していかなければ信用を失ってしまうかもしれません。
経営陣・本部との距離感の違い
日系企業の本部や経営陣の所在地は、基本的に日本国内に存在し、法務部も国内に部署が置かれていることが多いでしょう。
これに対して外資系企業は、グローバル本社・アジアのヘッドクオーターとのやり取りが発生し、その方針に従って仕事をするケースが目立ちます。
日系企業であれば、自社で新しい方針を決定してから、その後の行動は基本的に本社ベースで進めていくことが容易でしょう。
しかし、外資系企業の場合、都内のヘッドクオーターだけですべての方針を決定することはできず、法務部でもグローバル本社側の決定にどこまで寄り添うのか、まず国内で意志の統一が図られなければなりません。
つまり、外資系企業は、日本国内と国外との間で二重のコミュニケーションを要するため、方針決定までに時間がかかってしまうリスクがあります。
また、本国との時差の関係で夜中にミーティングがセッティングされることも中にはあるので、働き方を気にされる方は注意が必要です。
英語を必要とする場面の違い
日系企業内においては、法務部内外を問わず、基本的には日本語でコミュニケーションを図る場面がほとんどです。
もちろん、海外の子会社・支店・グループ企業などとやり取りを行う際は、最低限の英語力は求められるでしょう。
しかし、外資系企業の場合は、そもそも社内ルールとして「英語を公用語とする」文化が根付いている可能性があります。
社員の英語力によっては、一目メールを見ただけでは上司の指示が十分に確認できないという可能性も十分あるため、より高度なビジネス英語を使えるよう勉強しておかなければなりません。
外資系企業の法務の年収は高いのか
日系企業に比べて、自分の領分で求められていることをきっちりこなす能力が求められる外資系企業ですが、高い評価が得られれば年収増に手が届きやすい環境でもあります。そのような事情から、外資系企業の年収は、日系企業と比較しても高い部類に入ると言われています。以下に、日系企業・外資系企業それぞれの求人情報から、年収・待遇等を比較してみましょう。
スタッフクラスの求人情報について
まずは、MSAgentに掲載されている求人情報のうち、スタッフクラスの求人情報を比較してみましょう。
<日系企業の求人>
ポジション |
法務スタッフ |
仕事内容 |
○契約書作成~チェック ○労務・コンプライアンス ○紛争対応 ○リスクマネジメント・緊急時対応 など |
応募条件 |
○法務経験者 ○法科大学院修了生 など |
想定年収 |
300~500万円 |
<外資系企業の求人>
ポジション |
法務スタッフ |
仕事内容 |
○契約関連業務 ○コンプライアンス関連業務 ○登記、各種許認可関連業務 ○商事法務関連業務 |
応募条件 |
事業会社での法務経験3年以上 英語力(目安:TOEIC800点以上) |
想定年収 |
450~750万円 |
上記の求人を比較する限り、日系企業より外資系企業の方が、より実務経験を重視していることが分かります。
また、外資系企業の場合、応募条件に一定の英語力が求められることもあるため、想定年収が高い分だけ求められる能力も増えるものと考えてよいでしょう。
管理職クラスの求人情報について
続いては、管理職クラスの求人情報について、同じくMSAgentに掲載されている求人情報を確認していきましょう。
<日系企業の求人>
ポジション |
法務(マネージャー候補) |
仕事内容 |
○各事業部と積極的に連携し、ビジネス推進を強力にサポート ○SaaS、MaaSなどの先端領域における新規事業サポート ○М&Aや各種プロジェクト対応 ○コンプライアンス、訴訟対応 ○後進の指導 |
応募条件 |
○企業法務経験10年以上 ○弁護士有資格者 ○英語スキル ※(読み書きに対応可能なスキル) |
想定年収 |
850~1,100万円 |
<外資系企業の求人>
ポジション |
コンプライアンスマネージャー ※(もしくは将来の候補) |
仕事内容 |
○日本、アジア地域のコンプライアンスプログラムの構築, 維持, 推進 ※(コンプライアンス教育、 情報発信, コンプライアンス相談の対応等々) ○倫理規定の実践の徹底、インテグリティ文化の醸成、関係法令の遵守 ○内部通報制度の維持、コンプライアンス社内調査の対応 ○コンプライアンスリスクアセスメント、コンプライアンス監査の対応 ○その他コンプライアンス関連業務 |
応募条件 |
○基本的な重要法令の知識 ※(独禁法、贈収賄防止法、個人情報保護法、下請法等) ○法務関連文書作成能力 ○ビジネスレベルの英語能力(読解、ライティング、スピーキング) ○論理的思考能力、分析力 ○コミュニケーション能力 ○ワード、エクセル、パワーポイントの使用経験 ○TOEIC850点以上目安 |
想定年収 |
800~1,500万円 |
求人情報を比較する限り、想定年収のレンジは外資系企業の方が広く、実力によっては1,500万円という高額の年収も実現可能なことが分かります。
外資系企業の法務に転職するためのポイントとは
外資系企業の法務は、全体的に実務経験・語学力を重視する傾向にあります。
日系企業の場合、あまり具体的な実務経験・語学力に言及していない求人情報も見受けられますが、外資系は「応募者に求めるもの」を明確にしている求人情報が目立ちます。
特に、語学力に関しては、会議などで使用可能なレベル(ビジネス会話レベル)を求められることも少なくありません。
よって、外資系企業に法務として転職するのであれば、ビジネスレベルの英会話を難なくこなせるところまで上達させておく必要があります。
具体的な指標としては、TOEICの点数などがあげられます。(最低ラインとして700点以上、出来れば800点以上と求めてくることが多いです)
カルチャーフィットを重視する企業もあるので、歴史のあるいわゆる老舗の日系企業に在籍されている場合は、20代~30代前半などで1度転職活動を考えた方が求人の選択肢は豊富にあります。
また、企業によっては独自の応募条件・歓迎条件を設けているところもあります。
製造業あれば「メーカー企業での実務経験」、中国人相手のIPO企業であれば「中国語(読み書き会話までビジネスレベル)」が歓迎されるケースもあるため、一概に英語力だけにスキルを絞る必要はありません。
あくまでも、求人情報を読み解く中で、何が応募者に求められているのかを正しく理解することが大切です。
まとめ
外資系企業の法務職は、日系企業以上に最初からプロフェッショナルを求める傾向にあります。一つひとつの業務について、誰が何をやるのかが明確になっている分だけ、自分の領分には徹底して責任を持つスタンスが求められるでしょう。
また、人間関係がグローバルになる分、コミュニケーションの取り方も変わってきますし、本国との時差の関係で夜中にミーティングが発生することも中にはあります。
必須条件・歓迎条件は企業によって異なりますから、自分のキャリアや年齢次第で食い込める可能性は十分あります。
企業風土や日系企業・外資系企業の違いを掴むことができれば、その分だけ内定に至る確率も高まるはずです。
まずは、応募先がどんな人材を求めているのか、入念に調べることから始めましょう。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。企業側を支援するリクルーティングアドバイザーとして約6年間IPO準備企業~大手企業まで計1000社以上をご支援。
女性リクルーティングアドバイザーとして最年少ユニットリーダーを経験の後、2019年には【転職する際相談したいRAランキング】で全社2位獲得。
現在は法科大学院修了生~法務経験者、管理職経験者、弁護士の方までリーガル領域を中心に幅広く担当しております。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 法律・特許事務所 ・ 役員・その他 ・ 社会保険労務士事務所 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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